入江亮研究室(大学院自然科学研究科)
入江亮研究室
【大学院自然科学研究科】理学専攻化学講座
Lab’s data【入江研究室データ】
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研究テーマ
- 空気中の酸素を酸化剤とする触媒的不斉酸化反応の開発
- 酸化還元不均化反応を鍵とする触媒的不斉環化芳香族化?異性化反応の開発
- ヘテロヘリセン類の不斉官能基化の開発
- 擬アズレン骨格を含むπ電子共役系化合物の創出
- 生理活性を有するカルバ糖の合成
軸不斉をもつ擬アズレンの構造(右)とらせん状にねじれヘテロへリセンの構造(左)
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メンバー
入江亮教授、大学院生7人(うち1名国内留学中)、学部4年生4人 -
OB?OGの進路
東ソー株式会社、花王株式会社、大塚化学株式会社、株式会社ADEKA、日本触媒株式会社、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社、和光純薬工業株式会社、ダイソー株式会社、高校教諭 ほか
Passion, Action, and Creation!
オリジナルの触媒を使って新反応を創出しよう!
有機化合物の合成方法を研究する有機合成化学の中でも、入江亮研究室では主に酸化反応による合成方法を探っています。酸素酸化反応には触媒が必要で、例えば生体内で酸化反応(代謝)が起こる時は酸素が触媒として働きます。研究室では酸素に匹敵するような優れた触媒を見つけ、空気中に豊富にある酸素を使って新たな有機化合物を効率的に
官能基化
※
しようと取り組んでいます。また、化合物の“背骨”ともいえる「炭素-炭素結合」を構築する方法(酸化的カップリング反応)なども研究しています。
実験で使う触媒の中には研究室生まれのものも。「市販の触媒で想定内の反応しか得られないことが多いのですが、オリジナルの触媒だと大きなブレークスルーが生まれるかもしれません。他人の研究のコピーはしない。なかなか成果が上がらず苦しい時もありますが、根気よく続けていれば必ず新しい発見に出合えます」と入江教授。
最近、入江研究室では、
不斉合成
※※
に用いる触媒の合成実験の過程で擬アズレンの骨格を持つ有機化合物を偶然発見。当初は“不要品”とみなされたこの化合物は、実は複雑な構造を持つ特殊なものだという、大きな発見となりました。
入江教授は学生たちに、“気付き”“発見する”力を身に付けてほしいと語ります。「まず、“分からないことがいかに多いか”を学び取り、そして、有機合成化学の可能性は無限大だということを感じてほしい。そうすれば、想定外の結果から新たな発想ができる人になれるのではないでしょうか」。研究室の合言葉は“Passion, Action, and Creation”。「情熱を持って、実験を続ける人だけが、何かを創造することができます。自分の研究に誇りを持ち、有機合成の世界を変えるんだという思いで、研究に取り組んで欲しい」とエールを送ります。
※官能基化??? | 「炭素-炭素結合」などの骨格にくっつくことで、骨格の持つ性質に、さらに独特の性質を与えるグループを形成すること。 |
※※不斉合成??? | 同じ組成でありながら化学構造が右手と左手のように異なる光学活性体を作り分ける技術。光学異性体は、生物にとってどちらか一方のみが機能、または毒性をもつことが多いため、必要とする光学活性体を選択的に化学合成することが望まれる。 |
Interview:
予想と違う結果が出た時の方が面白い!
大学院自然科学研究科
博士前期課程理学専攻2年 古澤 将樹さん
プラスチック製品や洗剤、医薬品など、私たちの身の回りには有機化合物が溢れています。私は人のためになる研究をしたいとの思いがあり、人には最も身近な分野として有機合成化学を学べるこの研究室を選びました。
研究室に入ってからの大きな出来事といえば、擬アズレンの骨格を持つ今までにない構造をした有機化合物を発見したことです。元々これはヘテロへリセンを作る過程で見つかった副生成物に過ぎず、生成量も全体の5%しかありませんでした。この化合物の形に引かれた私は、これまでの経験を生かし試薬、溶媒、温度など条件をさまざまに変えて実験を行ったところ、擬アズレンだけを100%の収率で合成することに成功したのです。狙ったとはいえ、ここまで成果が出たのには正直驚きました。最初は偶然に見つけた反応も、今ではそのメカニズムが明らかになり、これを足掛かりに新たな合成反応をいくつか開発することができました。
このように思いもよらない結果から新しい発見があるのが、有機合成化合の面白いところ。来年は博士後期課程に進み、研究を続けたいと思っています。
密着!入江研究室
有機合成の世界を変える発見を目指し、日々研究に励む入江研究室におじゃましました。
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10:00
分子の流出速度(吸着力)の差を利用し、シリカゲルを使って化合物を分離精製する「シリカゲルカラムクロマトグラフィー」。
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10:30
磁力を利用する「マグネティックスターラー」を使い、フラスコの中の攪拌(かくはん)子を回転させながら、有機化合物ヘリセンを合成。
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11:30
器具や試薬が所狭しと並ぶ研究室の一角で、合成に使用するボロン酸の結晶をガラスフィルターでろ過中。
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13:00
週3回、学生たちは自主的に勉強会を開く。有機化学に関する文献を読み解きながら、ディスカッションし理解を深め合う。
(熊大通信51号(2014 WINTER)1月1日発行)
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マーケティング推進部 広報戦略ユニット
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