ステージが進行した慢性腎臓病の合併高血圧症の予後改善にアンジオテンシン抑制剤が有効―慢性腎臓病の重症化対策に有用なエビデンス―
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は国民病と言える程発症頻度が高く、病期(ステージ)が進行すると末期腎不全に至るだけでなく、脳卒中や心筋梗塞等の心血管疾患を発症する危険性が極めて高くなる疾患です。しかしながら、重症化の抑制や心血管疾患発症を予防する対策は、未だ十分に確立していません。
今回、熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)の光山勝慶教授らの研究グループは、高血圧患者を対象とした臨床試験の結果を解析調査しました。その結果、ステージが進行した慢性腎臓病を併発している高血圧患者では、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
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を用いた降圧治療が、他種降圧薬による治療よりも心血管疾患の発症や腎機能悪化などを有意に抑制していることを明らかにしました。ARBは既に多種類の後発品(ジェネリック)が販売されており、この種の薬剤を進行した慢性腎臓病合併患者の高血圧治療に適切に使用することにより、患者の予後改善が期待できるだけでなく、医療費の抑制効果も期待できる可能性があります。
本研究成果は、オープンアクセスジャーナル「Scientific Reports」に平成30年2月16日英国時間10時(日本時間2月16日19時)に公開されました。
【掲載雑誌】
Scientific Reports
【論文名】
Cardiovascular and renal protective role of angiotensin blockade in hypertension with advanced CKD: a subgroup analysis of ATTEMPT-CVD randomized trial
【DOI】
10.1038/s41598-018-20874-4
【著者】
光山勝慶(熊本大学大学院生命科学研究部生体機能薬理学)(責任著者)
副島弘文(熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学/保健センター)
安田修(熊本大学医学部附属病院*/現鹿屋体育大学)
野出孝一(佐賀大学医学部循環器内科)
陣内秀昭(陣内病院)
山本英一郎(熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学)
関上泰二(せきがみ内科?糖尿病内科)
小川久雄(熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学*/現国立循環器病研究センター)
松井邦彦(熊本大学医学部附属病院地域医療?総合診療実践学寄附講座)
*は本研究成果研究時の所属
【研究支援】
本研究は、長寿科学振興財団が日本ベーリンガーインゲルハイム社の資金を受けて実施した指定研究「アテンプト研究事業」の一環として行われました。本研究は研究遂行中の情報管理を厳格にし、スポンサー企業を含めた第三者が結果に関与や影響を及ぼすことがない体制のもとで研究を実施したものです。
【詳細】
プレスリリース本文
(PDF 257KB)
(本研究に関するお問い合わせ)
熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)生体機能薬理学
教授 光山 勝慶
電話:096-373-5080
e-mail:mitsuyam※kumamoto-u.ac.jp
(ATTEMPT研究全般に関する問い合わせ)
国立循環器病研究センター
理事長 小川 久雄
e-mail:ogawah※ncvc.go.jp
熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学/保健センター
准教授 副島 弘文
e-mail:yuuki※gpo.kumamoto-u.ac.jp
(メール送信の際は※を@に置き換えてください)