平成20年度熊本大学卒業式?修了式
本日、ここに、ご来賓各位のご臨席を賜り、理事?副学長?部局長と共に平成20年度の卒業式?修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。ご卒業?修了おめでとうございます。4年前に新設しました文学部コミュニケーション情報学科の一期生を含む皆さんが本日のこの式典に臨むことができますのは、皆さん自身の努力と研鑽の賜物であり、深く敬意を表します。
中でも病気や経済的理由等の事情で規定の年限以上に在学せざるを得なかった方々、そして母国の期待を担い、留学を立派に終えられた留学生の皆さん、あるいは、熊本大学への強い愛着のためか規定の年数以上に在学された方々にとっては、感慨もひとしおと推察いたします。
諸君の今日がありますのは、教職員や諸先輩の温かな指導?助言、ご家族や学友の協力と励ましなどの力添えがあったからであることをこの機会に改めて認識していただきたいと思います。
そこで、僭越ですが、ここで時間を少し差し上げますので、目を閉じて皆さんがお世話になった人々の顔を思いおこしてください。
どうぞ!〈 10秒間 〉
ありがとうございました。そして、今皆さんが最初に思い浮かべた方々に、修了証書?学位記をお見せして、“ありがとうございました”と口に出して、感謝の気持ちを表すことをお願いいたします。
私としましても、これまで皆さんを深い愛情によって支えて下さったご家族をはじめ、惜しみないご指導ご助言をいただいた教職員、諸先輩各位に対し、衷心より深く感謝申し上げます。
皆さんは、生まれてからこれまで、保育園及び幼稚園に始まり、小、中、高、大学、さらには大学院まで進み、今ここに、卒業?修了式を迎えたわけですから、この人生の1/3にも相当する長いながい準備の為の期間と、その間に受けた教育に思いを至らせ、必ずや幸福な人生を築いてみせるとの決意を強く持っていただきたいと思います。
さらに申し上げれば、皆さんには、自らの幸福を築く以外に、社会の幸福を築く義務と責任が、客観的には、存在します。皆さんは国や社会からも大きな支援を受けてきたという事実があるからです。すなわち、国が国立大学に措置している国税による費用を全学生数で割りますと、一人平均1,000万円以上、医学部医学科卒業生にとっては一人平均3,000万円以上になります。全て皆様だけのことに使われたわけではないにしろ、国は相当額皆さんに投資したことになります。
社会の幸福を築く義務と責任を果たす、と言葉にすると重いのですが、考え様によってはそんなに難しいことではなく、次の2つのことを成立させれば良いのです。そのひとつは、多くの皆さんがそうされていると思いますが、自分の夢や志を社会の幸せを創り出すモノやコトと一致させていることであり、ふたつ目は、その夢や志を成し遂げる努力を継続することです。このふたつのことを実現させれば、社会も皆さんも幸せになることができ、皆さんに対する国の支援は充分に報われることになるのです。すなわち、他者や社会の存在無しに個人は存在し得ないので、他者や社会への思いが重要でありますし、他者や社会の幸せを実現することが、皆さん自身の個人としての幸せをももたらすという認識が重要であります。いずれにしても、以上の枠組の中では、自分で自分の幸せの為に努力することによって、全てを解決することができる点がポイントであります。
次に、幸せを得るために必要な力についてお話します。皆さんは、今日の日を迎えるまでに、既に、
1)個人としての自立、2)人間としてどのように生きるかという考え方の基礎の形成、3)情報化、グローバリゼーションの中での国際的素養、4)目指すべき幸せな社会とは何かということと問題意識、5)専門家として創造的に考える力
などを獲得してきたと思います。これらに加えて、さらにこれから、自らと社会の幸せを築く為に必要なことの中から重要な3つのことを申し上げます。
最初のひとつは、(1)時代とともに変化する社会の状況と価値観を敏感に感じとり、自分の夢や志を必要に応じて修正する力です。皆さんの夢、志、やりたいことが時が経っても変化しない価値を持つものであれば、この必要は無いのですが、具体的には10年ごとの小さな目標を立て、それを修正しながら積み上げることで大きな目標に到達することを考えるように勧めます。先週末に「黒部の太陽」というTVドラマが放映されました。御覧になった方もおられるかも知れませんが、黒部川第四発電所を造るためのトンネルを掘る土木技術者の苦闘を描いた、愛と勇気の物語です。実は同名の映画が40年前に製作されており、土木を志した学生時代の私はそれを観て随分勇気づけられましたので今回も興味を持って観てみました。黒四ダムの建設は、敗戦後10数年を経た昭和30年代の日本の電力不足を考えれば、当然なすべき大事業でありましたし、その後の日本の復興に大きな役割を果たしました。しかし、現在においては、ダム建設が必ずしも絶対的な価値を持つものでは無くなったのも事実であり、社会の状況と価値観の変化に深い感慨を持ちながら観終えることになりました。社会基盤整備の重要度や価値観が時?経過と国の有り様によって変化する一例と考えられます。
二つ目は、(2)専門家として創造的に考える力に磨きをかけるという「誠実な努力を継続」することです。現在の日本及び世界は、サブプライム問題に端を発した百年に一度とも言われる経済危機に見舞われつつあります。短期的な景気回復や雇用確保のために公的財政出動の必要性は、多くの人が認める所です。しかし、中長期的な日本の立ち直りは、バーチャルな価値ではなく、市場経済にのみ左右されることの無い本質的な価値を創造することによって実現されるでしょう。社会に出て行かれる皆さんには、さっそくの試練、荒波が待ち受けているわけですが、ひるむことはありません。ピンチをチャンスにという考え方がありますから、熊本大学で培った力を存分に発揮し、立ち向かっていただきたい。そのためにも新たなる価値の創造のための皆さんの「誠実な努力の継続」が不可欠であります。
最後は、(3)心身の健康管理力です。私達人間は、生身の壊れやすい生き物であることを時に忘れがちでありますが、心身の健康は最も重要な基本的な力であります。その為にはスランプや窮地に陥った時にも、自らを慰める術を知ること、あるいは、絶望から破局に至る前に「人生、生きてるだけで丸もうけ」と開きなおることなどは私の経験からも有効であります。
さて、熊本大学も、時代と共に変化する社会の価値観を敏感に感じとり、教育内容や研究の方向性に修正を加えながら、地域に根ざし、国際的に存在感を示す大学として、「誠実な努力を継続」してまいりました。その結果、ある程度の評価を得ていると思っておりますが、熊本大学の真の評価は、本学で学び研究した卒業生諸君の生き方にかかっています。すなわち、皆さんの内のどれだけ多くの人がより幸せな人生を歩めるか、また、諸君がどれだけ多くの質の高い幸せを社会にもたらすことができるかという点にかかっていると思います。
「心身の健康」を保ち、プロフェッショナルとしての「誠実な努力を継続」して、幸せな社会を築くこととなる志を持ち続け、夢を実現するという皆さん自身の輝かしく幸せな人生、すなわち、明治の思想家内村鑑三の言う「後世への最大遺物」を、諸君の命を育んだ美しい国、美しい地球に残されんことを切に希望し、はなむけの言葉とします。
最後に巣立っていかれる皆様の生きる力強さ、元気さを確かめたいと思います。一人ずつのお名前を読み上げて返事をいただきたいところですが、学部等毎に卒業生、修了生の所属と人数を申し上げますので該当する人々は人数を読み上げた直後に“はい”または“オー”と大きく答えてください。声の大きさで諸君の「未来の輝き」を確認したいと思います。
【文学部169名】、【教育学部及び特別支援教育特別専攻科?養護教諭特別別科356名】、【法学部205名】、【理学部190名】、【医学部266名】、【薬学部98名】、【工学部574名】。
大学院【文学研究科】【教育学研究科】【法学研究科】【医学研究科】【医学教育部】【薬学教育部】【自然科学研究科】【社会文化科学研究科】【法曹養成研究科】計724名。
ありがとうございました。以上、総勢【2582名(内、留学生42名)】の皆さん一人一人に対し、熊本大学を代表し、皆さんの前途洋々たる船出を祝します。おめでとう!!そして、Bon Voyage!!
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