年頭所感

a.jpg

 この度、令和6年1月1日に発生しました能登半島地震により亡くなられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆様ならびにその関係の方々に心よりお見舞い申し上げます。

 皆様、本年もよろしくお願いいたします。

 昨年は多くの挑戦がありましたが、皆様のご協力によって、本学は前進し続けることができました。教育、研究、そして地域社会への貢献において、素晴らしい成果を上げることができたことを心から感謝申し上げます。今年も様々な課題に直面すると思いますが、共に協力し、団結して乗り越えていきましょう。

 大学を取り巻く環境は急激に変化しています。デジタル?トランスフォーメーション(DX)への対応、カーボンニュートラルへの挑戦、さらには少子化に伴う18歳人口の急激な減少を始め、地域紛争、エネルギー、気候変動問題など、多くの複雑で困難な課題に直面しており、スピード感をもって、これらの課題の解決に向けた社会変革の原動力になることが求められています。

 私が2021年4月に学長に就任してから、3年が経とうとしています。2022年4月には、国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、2030年までを見据えた熊本大学の中長期的なビジョンとして、 “地域と世界に開かれ、共創を通じて社会に貢献する教育研究拠点大学”の実現を掲げ、その実現に向けた戦略と取組をまとめた「熊本大学イニシアティブ2030」を策定しました。
? “常に情報を発信し続ける大学”、“常に外から見える大学”、“常に外からの声に耳を傾け、発展し続ける大学” を基本姿勢に掲げて改革を進めるとともに、積み重ねてきた信頼と実績を基盤として、教育?研究?社会貢献をより一層強化し、これらの成果を地域?社会?世界の発展のために積極的に還元していかなければなりません。
 2024年も引き続き「熊本大学イニシアティブ2030」に沿った施策を遂行していきますが、そのキーワードは「融合」と「グローバル化」だと、私は考えています。「融合」とは、文系?理系を問わない教育分野の融合、異なる研究分野の融合、そして、それらの原動力となる組織?人の融合です。また「グローバル化」については、今日のわが国の状況を考えると、教育?研究共に世界を見据えた戦略が必要です。特に熊本は今後益々グローバル化が進む地域となります。このような状況の中、本学は人?物?事のグローバル化を推進し、学内はもとより、地域のグローバル化についても推進していきます。

 「教育」に関しては、本年(2024年)4月には、いよいよ学部相当の教育組織としては昭和24年(1949年)に本学が創設して以来初めてとなる「情報融合学環」、および国内の大学で初めてとなる半導体技術者?研究者の育成に特化した「工学部?半導体デバイス工学課程」に新入生が入学します。「情報融合学環」では、半導体分野の人材育成に留まらず、文理融合の学部横断的な教育を実現する学部等連係課程として、数理?データサイエンス?AIの基礎知識を有し、それらを駆使してイノベーションを創出し国際社会で活躍できる人材を育成していきます。
 また、グローバル化の推進のため、附属学校?園の国際化や2つめの「学環」構想も検討を始めており、年内には構想を打ち出せるよう、準備したいと考えています。
 さらに、科学技術イノベーション創出に向けた高度な専門性を有した博士人材の育成にさらに力を注いで参ります。特にオープンイノベーションが大切であり、組織内?外の技術やアイデアを組み合わせることにより、革新的な価値を創り出すイノベーションを創出し、グローバルに活躍する人材の育成が喫緊の課題と認識しています。

 「研究」については、半導体分野における人材需要が高まっている中、高度な人材の供給に応えることは本学の責務と考え、2023年4月に大学院先端科学研究部附属半導体研究教育センターを全学組織に発展させた「半導体?デジタル研究教育機構」を設置したところ、国内外から優秀な研究者が集結する組織へ発展しました。
 施設整備については、「地域中核?特色ある研究大学の連携による産学官連携?共同研究の施設整備事業」に採択され、半導体産業を支える研究及び幅広い分野で次世代?最先端研究から実装研究に係る共同研究を実施する「DXイノベーションラボラトリー(仮称)」を建設しています。さらに、「大学?高専機能強化支援事業(高度情報人材の確保に向けた機能強化に係る支援)」のハイレベル枠7大学の一つに採択されたことにより、隣接して「DX総合教育棟(仮称)」も建設しています。これらにより、教育?研究ともに半導体人材育成を含めたイノベーション創出に貢献します。本学は今、「100年に一度」といっても過言ではない変革期にあることは間違いありません。
 さらには、生命科学、自然科学、並びに人文科学分野に設置した国際先端研究組織を更に発展させ、オンリーワンの研究拠点を構築し、世界レベルの研究を展開するとともに国内外から卓越した研究者を集めます。

 「社会との共創?医療」では、大学を地域と世界に開放し、地域や社会並びに世界の様々なステークホルダー、教育?研究機関等と協働すること、すなわち共創によるオープンイノベーションを通して、地域の活性化や地方創生を推進していきます。また、地域医療を含めた県内全体の医療レベルの向上と効率化を進めるために、県や医師会と連携して「くまもとメディカルネットワーク」を構築しています。病院、診療所、薬局、介護施設などをネットワークで結んで必要な情報を共有し、より良い医療に役立てる仕組みです。

 結びとして、本学が持続的に発展していくためには、国や地域など社会が求める要望を見極め、変化に対応することが重要です。そのためには、「融合」と「グローバル化」を進め、スピード感を持って大学改革を行うことが必要だと考えます。

 今後とも皆様のご協力とご支援をお願いしまして、令和6年(2024年)年頭のご挨拶といたします。

                               令和6年(2024年)1月4日 熊本大学長 小川久雄