令和6年度熊本大学卒業式?修了式 式辞
卒業生、修了生の皆さん、本日は誠におめでとうございます。
先日、春の訪れを知らせる便りのように、全国に先駆けて、熊本県の観測地点において最も早く桜の開花が発表されました。このようなよき日に、御来賓各位の御臨席を賜り、部局長、並びに教職員の皆様とともに令和6年度の卒業式?修了式を挙行し、合計2340名の諸君を送り出すことができることを心から嬉しく思います。
皆さんは、本学での勉学を終え、門出の日を迎えられました。数々の試練や困難を乗り越え、今日の日を迎えられましたことに、敬意を表するとともに、改めて心からお祝い申し上げます。4年間で卒業される方は令和3年度に入学されたわけですが、令和3年度は私が学長に就任した年でもありますので、私個人としての感慨も一入(ひとしお)です。また、皆さんをずっと支え励ましてくださったご家族をはじめ、恩師、友人、先輩、後輩など周りの全ての方々に対し、皆さんと一緒に、改めて感謝とお礼を申し上げたいと思います。
皆さんが本学で学んだこの数年間の国内外の情勢を振り返ってみますと、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとパレスチナの紛争など、現在も予断を許さぬ状況が続いています。また、アメリカでは第二次トランプ政権が誕生し、世界情勢が大きく変化すると予想されます。一方、国内では、少子高齢化による労働力の減少、経済や教育、医療などでの地域格差の拡大、気候変動や自然災害、エネルギー問題、長期間にわたる経済成長の停滞など、長年にわたり山積した、さまざまな課題を抱えています。
? 熊本県に目を向けると、半導体関連企業を中心とした産業集積が急速に進んでおり、半導体産業の振興における重要地域として、国内はもとより国際的にも非常に注目されています。まさに百年に一度の変革期を迎えていると言っても過言ではないでしょう。熊本大学も、このような社会情勢に対応すべく、変化を続けております。2023年4月に「半導体?デジタル研究教育機構」を発足させ、世界的半導体製造企業であるTSMCや台湾の国立4大学との連携も進めています。また、2024年4月には、学部相当の教育組織の設置としては大学創設以来初めて、すなわち75年ぶりとなる「情報融合学環」を始動させ、工学部には「半導体デバイス工学課程」を設置しました。さらに、来年4月には、新たな学部相当組織として「共創学環」を立ち上げる予定です。
他方、今年の1月には「地域中核?特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」という、文部科学省の交付予定額55億円規模の事業に採択されました。本学の構想を一言で申し上げますと、「半導体実装から社会共創研究を通じて、地域イノベーションの実現と持続可能な産業都市構築を目指す」というもので、地域の企業と共にイノベーションを実現しながら、そのための機能強化?大学改革を断行していきます。
? このように、刻一刻と変化する国内外の情勢下において、皆さんには、社会の要請をしっかりと受け止め、真正面から挑戦し、社会に必要とされる人物になって欲しいと願っています。激動の時代において、皆さんが大学で培った知識と経験は、これからの社会でますます重要なものとなるでしょう。
? ここまで、変化することの重要性を述べて参りましたが、一方で「変わらないこと」も大切にしていただきたいと思います。本学黒髪キャンパスには、明治時代から変わらぬ姿で学生の皆さんを見守り続けてきた五高記念館をはじめとした全国に誇れる4つの国指定重要文化財の建造物があります。社会における変革の波に疲れたときは、五高記念館、そして懐かしのキャンパスにぜひ足を運んでいただき、学生時代の原点に立ち帰り鋭気を取り戻して欲しいと思います。
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ここで、これから様々な分野に進まれる皆さんに、私から贈る言葉として次の三つを挙げたいと思います。
一つ目は、「逆境の中での強さ」です。これからの長い人生は平坦な道ではありません。多くの困難が待ち受けています。心が折れそうな時もあるでしょう。そんな時に立ち上がる強さを持っていただきたい。皆さんの人生にはこれから、様々な困難が待ち受けているかもしれません。そのような場合でも、立ち上がり冷静に考え自分で決断して前に進んでください。これは私の経験からのアドバイスです。
二つ目は、社会に出てからの上司や友人を大切にしてください。これから社会へと踏み出す皆さんは、さまざまな出会いと経験を重ねていくことでしょう。良い仕事は決して一人ではできません。多くの人が力を合わせるとより良い大きな成果をあげられます。その時に私が最も大切にしてきた事は、自分自身も相手も、双方に良い結果がもたらされるように行動することです。近年、共創(コ·クリエーション)と言われていますが、多様な立場の人々が協力して、お互いがより価値のある成果を上げることが重要です。皆さんも熊本大学で学ぶ上で、歴史や生い立ちの違う様々な国や地域の出身者、あるいは年齢も学部も違う教員や友人?仲間と、例えばゼミやサークル活動の中で、目的を共有しながら何かを成し遂げるという経験をされたことと思います。まさにその経験は皆さんの財産?武器になるはずです。
三つ目は、熊本大学出身であるという誇りを持ち、大学時代の恩師や友人を大切にすることです。長い歴史と伝統のある熊本大学出身であるという誇りを持ち続けてください。私も卒業後、熊本を離れた時も本学の先輩や後輩から助けられ、熊本大学出身で良かったと何度も実感しました。
感謝の気持ちを持ち続け、互いに助け合うことの大切さを忘れずにいれば、どんな状況でも前向きに進んでいけるはずです。これまで皆さんを導いてくださった恩師、支えてくれた友人への感謝を胸に、これからの人生を歩んでください。
先程述べたように熊本大学はこれからも変わり続けていきます。その様子を随時、あらゆるメディアを通じて発信していきますので、さらに発展していく熊本大学のニュースに注目していただき、ぜひこれからはステークホルダーとしてご支援をいただきたいと思います。
? 皆さんの今後の人生においてはさまざまな挑戦が待ち受けています。熊本大学で培った知識と経験、そして本学のコミュニケーションワードである「創造する森 挑戦する炎」を胸に、自信を持って未来に向かって進んでください。
? 最後に、皆さんの未来が輝かしいものとなることを心から願い、卒業?修了に際しての式辞といたします。
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令和7年3月25日
熊本大学長 小川久雄