再生医療の扉を開く!自然の神秘への探求
夢物語だった再生医療を実現したい
2013年12月、マウスES細胞とヒトiPS細胞から“3次元の腎臓組織”の作製に成功したという熊本大学の発表は、世界中の注目を集めました。“3次元の腎臓組織”の作製成功という世界初の快挙を成し遂げたのは、熊本大学発生医学研究所腎臓発生分野の西中村隆一教授をはじめとする研究グループ。その中心となって研究を行ったのが、腎臓発生分野 博士課程4年?太口敦博さんです。
2009年、西中村研究室の門を叩いた太口さんは、西中村先生とともに腎臓前駆細胞の誘導を目指して研究をスタート。「1年目は、“サイエンスのイロハ”を学ぶトレーニング期間。細胞培養から組織学的な解析方法、マウスの扱い方まで、実験と解釈の仕方を学びました」。
発生学が基本となるため、まずはどのように腎臓ができていくのか、腎臓発生のメカニズムを研究する日々が続きました。当時はまだヒトiPS細胞でのノウハウが十分蓄積されていなかった時代、実際に胎児の体の中で腎臓が出来ていく過程を解析しながら、それをどのようにして試験管内でまずマウスES細胞を使って再現するか、試行錯誤の連続でした。
高校生の頃からヒトや生物に関する研究をしたいと、医学部に入学した太口さんは、学部時代には免疫学分野の研究室に出入りして基礎研究者の生活を体験。後期研修医の時に腎臓内科学を専門に選び、実際に臨床の現場で腎臓病に苦しむ患者さんの姿を目の当たりにし、腎臓再生の研究をしたいと基礎研究の道を選んだといいます。
「当時、腎臓に関する研究は思ったよりも進んでおらず、腎不全の患者さんは透析をずっと続けていかなくてはならない。それを救うことができる可能性は、再生医療にあると思い、自分も研究したいと思ったんです」。
再生医療について知った高校生の頃は、臓器を造ることはまだ夢物語だったという時代、その数年後には再生医学の最先端で研究をする太口さんの姿がありました。
研究成果を臨床に戻し、日本を元気に
研究をスタートしても思うような成果を手にすることができず、2年、3年という長い年月が過ぎていきました。指導にあたった西中村隆一教授も当時を振り返り、「本当によくくじけなかったと思います」というほど、我慢強く実験を続けていた太口さん。「3年目が一番つらかった時期ですね。でも研究を止めようと思ったことは一度もありません。西中村先生が私のしょうもないアイデアを聞いても止めることなく『やってみれば』と背中を押してくだ