澳门赌场(SARS-CoV-2)の変異株にも有効な中和モノクローナル抗体の作成に成功
【ポイント】
- 澳门赌场に感染し、重症化後急速に回復した症例から、中和モノクローナル抗体*1を作成することに成功しました。本抗体は、ウイルスのスパイク蛋白*2に強力に結合し、ウイルスが標的細胞のレセプター(受容体)*3に結合するのを阻止することで、感染の予防、重症化を抑制することができます。
- 本抗体は、従来型ばかりでなく、イギリス型(アルファ型)、南アフリカ型(ベータ型)、ブラジル型(ガンマ型)、インド型(デルタ型)など、多くの変異株*4も低濃度で中和する活性があることが分かりました。
- 本抗体を用いた中和抗体療法は、ワクチンの効果が不十分な例やワクチン未接種者ばかりでなく、変異株の感染者に対しても、ワクチンと同等の重症化阻止効果や感染予防効果が期待されます。
【概要説明】
ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスの松下修三特任教授らの研究グループは、澳门赌场感染症(COVID-19)で重症化後に急速に回復した症例から、強力な中和モノクローナル抗体を分離することに成功しました。ウイルスに抗体が結合して細胞へのウイルスの侵入を妨害する効果を「中和」と呼び、中和抗体は、治療薬の本命と言われています。これまでも世界各国で中和抗体が開発されてきましたが、十分な臨床効果が得られていません。今回開発した抗体は、中和活性が世界でも最も強力であるばかりでなく、桁外れの結合活性を持ち、臨床効果が期待できる抗体と考えられます。本研究は、京都大学ウイルス?再生医科学研究所の小柳義夫教授を始めとした多数の共同研究者の協力によってなされました。
なお、本研究成果は、令和3年7月13日午前11時(米国東海岸時間)に科学雑誌「Cell Reports」に掲載されました。
また、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「新興?再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」の支援を受けて実施したものです。
【成果】
COVID-19のパンデミックは、既存のワクチンに対して抵抗性をもつ変異株の流行という、新たな局面を迎えています。本研究グループは、SARS-CoV-2に感染し、重症化後に回復した2症例から、強力な中和活性を持つ4種類のヒトモノクローナル抗体を分離し、特許を出願しました(出願番号:特願2020-143055)。これらのうち2抗体は、武漢型、ヨーロッパ型(D614G)のウイルスに加え、世界的に問題となっているイギリス(B.1.1.7、アルファ型)、南アフリカ(B.1.351、ベータ型)、デンマーク(mink cluster 5)、ブラジル(P.1、ガンマ型)、インド型(B.1.617.2、デルタ型)の変異株に対し低濃度で強力な交差中和活性を示し、COVID-19パンデミックに対する切り札となりうると考えます。特に、9-105抗体は、SARS-CoV-2のレセプター結合部位に強力に結合し、低濃度でウイルスの増殖を阻止すると考えられます。米国で緊急承認された中和抗体が、70-100mg/kgで投与され、コストが問題であるのに対し、本抗体は強力な中和活性をもつことから、約100分の1の投与量で効果が期待できると考えられます。
【展開】
本研究成果をもとに、本学は中和抗体の医薬品化の可能性の検討に関して共同研究契約を2020年12月に明治グループと締結しました。変異株に対する中和活性について、本年3月には国内優先権出願を済ませております。今後は、9-105抗体の臨床応用に向けた基礎研究、非臨床試験を推進する予定です。
【用語解説】
*1中和モノクローナル抗体:ウイルスの表面にあるスパイク蛋白に結合し、標的細胞への感染を阻止する抗体。
*2スパイク蛋白:ウイルスの表面の突起物。スパイク蛋白が標的細胞の受容体に結合することで感染を起こす。ワクチンの標的となる蛋白質。
*3レセプター(受容体):ウイルスが感染する際に結合する標的細胞の表面分子。SARS-CoVの場合、ACE2蛋白である。
*4変異株:澳门赌场の流行拡大によって出現した、顕著な変異を有するウイルス株。現在まで、イギリス株(B.1.1.7 系統、アルファ型)、南アフリカ株(B.1.351 系統、ベータ型)、ブラジル株(P.1 系統、ガンマ型)、インド株(B.1.617 系統、デルタ型)が、「懸念すべき変異株」として認定されている。伝播力の向上や、免疫からの逃避能力の獲得などが報告されている。
【論文情報】
論文名:Resistance of SARS-CoV-2 variants to neutralization by antibodies induced in convalescent patients with COVID-19
著者:Yu Kaku, Takeo Kuwata*, Hasan Md Zahid, Takao Hashiguchi, Takeshi Noda, Noriko Kuramoto, Shashwata Biswas, Kaho Matsumoto, Mikiko Shimizu, Yoko Kawanami, Kazuya Shimura, Chiho Onishi, Yukiko Muramoto, Tateki Suzuki, Jiei Sasaki, Yoji Nagasaki, Rumi Minami, Chihiro Motozono, Mako Toyoda, Hiroshi Takahashi, Hiroto Kishi, Kazuhiko Fujii, Tsuneyuki Tatsuke, Terumasa Ikeda, Yosuke Maeda, Takamasa Ueno, Yoshio Koyanagi, Hajime Iwagoe and Shuzo Matsushita* (*Corresponding)
掲載誌:Cell Reports
doi:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2021.109385
URL:https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(21)00783-X
【詳細】
? プレスリリース本文(PDF846KB)
ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパス 臨床レトロウイルス学分野
担当:特任教授 松下修三
電話:096-373-6536
e-mail:shuzo※kumamoto-u.ac.jp
(迷惑メール対策のため@を※に置き換えております)