第一世代抗うつ薬のリゾホスファチジン酸受容体を介した新たな薬理作用を解明 ~新しい治療薬の創薬標的として期待~
【ポイント】
- 重症うつ病に効果が高い第一世代抗うつ薬の抗うつ作用に、リゾホスファチジン酸(LPA)受容体が関与していることを明らかにしました
- 第一世代抗うつ薬はLPA1受容体作動薬として働くことをうつ病モデルマウスを用いて明らかにしました
- バイアス型の特徴を有するLPA1受容体作動薬が新しい治療薬の創薬標的として期待されます
【概要説明】
熊本大学大学院生命科学研究部の竹林実教授、梶谷直人特任助教、国立病院機構呉医療センターの岡田麻美研究員らによる研究グループは、東京大学の青木淳賢教授、東北大学の井上飛鳥教授、東京慈恵会医科大学の宮野加奈子特任准教授、上園保仁特任教授との共同研究により、第一世代抗うつ薬がLPA1受容体バイアス型作動薬として働き、抗うつ作用に関与することをうつ病モデルマウスを用いて明らかにしました。重症うつ病患者には、現在臨床で最もよく使用されている第三世代抗うつ薬よりも第一世代抗うつ薬の方が重症例に治療効果が高く、そのメカニズムは不明でした。本研究成果により、第一世代抗うつ薬の高い治療効果を説明する可能性のある新たな薬理作用を示すことができました。今後、LPA1受容体バイアス型作動薬が新しい治療薬の創薬標的として期待されます。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金、科学技術振興機構、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、先進医薬研究振興財団、武田科学財団助成の支援を受けており、研究成果は科学雑誌「Neuropsychopharmacology」のオンライン版に令和5年9月6日に掲載されました。
【論文情報】
論文名:G protein-biased LPAR1 agonism of prototypic antidepressants: Implication in the identification of novel therapeutic target for depression
著者:Naoto Kajitani+, Mami Okada-Tsuchioka+, Asuka Inoue, Kanako Miyano, Takeshi Masuda, Shuken Boku, Kazuya Iwamoto, Sumio Ohtsuki, Yasuhito Uezono, Junken Aoki & Minoru Takebayashi*
+共同筆頭著者、*責任著者
掲載誌:Neuropsychopharmacology
doi:https://doi.org/10.1038/s41386-023-01727-9
URL:https://www.nature.com/articles/s41386-023-01727-9#citeas
【詳細】 プレスリリース(PDF635KB)
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