精子の形成に必要な新規遺伝子の発見-減数分裂における染色体の合体の仕組みを解明-
【ポイント】
- 精子が作られる際の減数分裂に働く新しい遺伝子FBXO47を特定しました。
- FBXO47は相同染色体*1の対合状態の安定化のメカニズムに働くことを発見しました。
- FBXO47遺伝子に障害が起きると精子が作られず不妊となることを明らかにしました。
【概要説明】
熊本大学発生医学研究所の石黒啓一郎教授、丹野修宏研究員、竹本一政研究員らのグループは、精子の形成に必要な減数分裂をコントロールする新しい遺伝子FBXO47を発見しました。FBXO47遺伝子は減数分裂の際に相同染色体の対合状態を安定化するように働くことや、FBXO47遺伝子に障害が起きると精子が作られず不妊となることを明らかにしました。これまで、精子が作られる際に生じる二価染色体*2を形成する仕組みの詳細は明らかになっていなかったため、今後の無精子症や精子形成不全を示す不妊症の原因解明などの生殖医療の進展につながる可能性があります。
本研究成果は、米国Cell Press社が刊行する科学学術誌「iScience」のオンライン版に令和4年3月16日(水)に、オンライン公開されました。
【今後の展開】
今回の成果は疾患モデル動物を用いた研究により検証されたものですが、FBXO47遺伝子はヒトにも存在することがわかりました。ヒトに見られる不妊症は原因が不明とされる症例が多く、今回の発見は、特に無精子症や精子形成不全を示す不妊症の病態の解明に資するものと期待されます。また、MEIOSINの指令下で働くことが予想される他の機能未解明の遺伝子の働きについてはまだ十分に解明されていません。今後、卵子?精子の形成過程におけるこれら他の遺伝子の働きも同時に解明することで、生殖医療に大いに貢献できると期待されます。
【用語解説】
*1 相同染色体:同じ遺伝子セットをもつ父方、母方に由来する2本の染色体。
*2 二価染色体:減数第一分裂時に父方、母方に由来する2本の相同染色体が対合して合体した状態を指す。
【論文情報】
論文名:FBXO47 is essential for preventing the synaptonemal complex from premature disassembly in mouse male meiosis
著者:丹野修宏、竹本一政、堀澤(高田)幸、島田龍輝、藤村幸代子、谷直紀、竹田直樹、荒木喜美、石黒啓一郎
掲載誌:iScience 25, 104008, April 15, 2022
DOI:10.1016/j.isci.2022.104008
【詳細】 プレスリリース(PDF363KB)
お問い合わせ
熊本大学発生医学研究所
染色体制御分野
教授 石黒啓一郎
電話:096-373-6606
E-mail:ishiguro※kumamoto-u.ac.jp
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