AIを活用した植物細胞形状の追跡計測技術の開発

【ポイント】

  • 従来、高価な顕微鏡装置が必要だった葉の表皮細胞の形状変化の追跡計測を低コストかつ高精度に実現する新技術を開発しました。
  • 本技術は、葉の表面に金属インクを塗布し、比較的安価な金属顕微鏡で撮影された画像をAIによって自動認識して形状を測るものです。
  • 本技術の普及によって、植物細胞の形づくりの仕組みの解明や、その特徴的な形状を活かした応用研究が飛躍的に進むことが期待されます。

【概要説明】

 熊本大学大学院自然科学教育部修士課程1年の菊川琴美大学院生と国際先端科学技術研究機構の檜垣匠准教授を中心とした研究グループは、葉の表面を構成する表皮細胞の形状変化を低コストかつ高精度に追跡計測する新技術を開発しました。

 双子葉植物の葉の表皮細胞の多くは、成長に伴って単純なレンガ型から複雑なジグソーパズル型に変形することが知られています。この特徴的なジグゾーパズル型への細胞形状変化は基礎生物学分野のみならず、人工構造物のデザインなどの応用研究分野においても注目されています。細胞形状変化を研究するにあたり、細胞を経時的に追跡して形の変化を計測する技術は基本的かつ重要な技術です。これまで、葉の表皮細胞の形状変化を追跡計測するためには特殊な技法や高価な顕微鏡装置が必要でした。

 今回、研究グループは金属インクを葉の表面に塗布することで比較的安価な金属顕微鏡でも細胞の形状を明瞭に可視化できることを見出しました。さらに、顕微鏡画像から細胞を自動認識して形を計測するAIシステムを開発しました。本技術の普及により、植物細胞の形づくりの仕組みに関する理解が飛躍的に進むことが期待されます。

 本研究成果は令和3年9月21日午後1時(日本時間)にオンライン科学雑誌「Frontiers in Plant Science」に掲載されました。本研究は文部科学省科学研究費助成事業(新学術領域研究「植物構造オプト」)の支援を受けて実施したものです。

【論文情報】

論文名:Metal-nano-ink coating for monitoring and quantification of cotyledon epidermal cell morphogenesis.
著者:Kotomi Kikukawa, Kazuki Yoshimura, Akira Watanabe, Takumi Higaki* (*責任著者)
掲載誌:Frontiers in Plant Science
doi:10.3389/fpls.2021.745980
URL:https://doi.org/10.3389/fpls.2021.745980


【詳細】
プレスリリース(PDF1062KB)

お問い合わせ
熊本大学国際先端科学技術研究機構
担当:檜垣 匠(准教授)
電話:096-342-3975
e-mail:thigaki※kumamoto-u.ac.jp
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