高尿酸血症患者に対するフェブキソスタット製剤による脳心腎血管関連イベント発現抑制効果について(FREED)

 川崎医科大学(岡山県倉敷市、学長:福永仁夫)の小島 淳主任教授、熊本大学(熊本県熊本市、学長:原田信志)の松井 邦彦医学部附属病院地域医療支援センター長、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄)の小川 久雄理事長らの多施設共同研究グループは、全国141施設が参加した高尿酸血症患者を対象としたフェブキソスタット製剤による脳心腎血管関連イベント発現抑制効果に関する多施設共同ランダム化比較試験(Febuxostat for cerebral and caRdiovascular events prEvEntion stuDy: FREED)を2013年4月から開始、4年間遂行し、このたびフェブキソスタットによる尿酸値の低下が高尿酸血症を有する高齢患者の予後を改善できること、特に慢性腎臓病の発症や進展予防が期待できることを見出しました。本研究の成果は、専門誌「European Heart Journal」に、2019年3月7日23時(日本時間)にオンライン掲載されました(https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehz119)。なお「European Heart Journal」のインパクトファクターは現在23.425で循環器系の科学雑誌の中では世界トップです

【概要】

 フェブキソスタットは本邦で発見された高尿酸血症治療薬として臨床試験を経て、2011年に日本で承認されました。これまで尿酸値を低下させることで予後を検討した前向き試験は世界的にもほとんどありませんでしたので、フェブキソスタットを投与することで、脳心腎血管関連イベント発現の抑制効果を検討するために行われたのがFREEDです。
対象は脳心腎血管リスクを有する高尿酸血症の65歳以上の高齢患者で、登録後ランダム化を行い3年間経過観察しました。最終的にはフェブキソスタットを投与した537例(フェブキソスタット群)とフェブキソスタットを投与しなかった533例(非フェブキソスタット群)の2群間で比較検討を行いました。
 ベースラインの尿酸値は2群間で差はありませんでしたが、試験終了時にはそれぞれフェブキソスタット群4.50±1.52 mg/dL、非フェブキソスタット群6.76±1.45 mg/dLで、フェブキソスタット群で尿酸値が明らかに低下しました。主要複合評価項目(総死亡、脳血管疾患、非致死性冠動脈疾患、入院を要する心不全、治療を要する動脈硬化性疾患、腎障害、心房細動発症の複合)は下図に示すように、フェブキソスタット群で23.3%であったのに対し、非フェブキソスタット群で28.7%とイベント発生率はフェブキソスタット群で低値でした(ハザード比=0.750)。主要複合評価項目の個々の要素では腎障害の発生を明らかに抑制しました(16.2% vs 20.5%)。
 結論として、フェブキソスタットによる尿酸値の低下は、高尿酸血症を有する高齢患者において、脳心腎血管関連イベントを減少させることができ、中でも慢性腎臓病の発症や進展予防が期待できると考えられました。

    【本研究の意義】

    FREEDは全国141施設が参加した大規模前向き臨床試験であり、高尿酸血症治療薬であるフェブキソスタットを用い検討され、痛風などの尿酸塩沈着症を予防するのみならず、脳心腎血管関連イベント抑制を証明できた世界初の研究です。本研究が今後の内科や循環器診療に寄与することが大いに期待されます。

    【詳細】

    プレスリリース本文(PDF369KB)

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